月夜の浜辺
中原 中也
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際(なみうちぎわ)に、落ちていた。
それを拾って、役立てようと
僕は思ったわけでもないが
なぜだかそれを捨てるに忍びず
僕はそれを、袂(たもと)に入れた。
月夜の晩に、ボタンが一つ
波打際に、落ちていた。
それを拾って、役立てようと
僕は思ったわけでもないが
月に向ってそれは抛(ほう)れず
浪に向ってそれは抛れず
僕はそれを、袂に入れた。
月夜の晩に、拾ったボタンは
指先に沁(し)み、心に沁みた。
月夜の晩に、拾ったボタンは
どうしてそれが、捨てられようか?
学生の頃、中原中也のこの詩がとても好きでした。
この詩を読むと、子どもの頃の石蹴りを思い出します。
石蹴りしていると、蹴っている石にとても愛着が湧いて、石が溝に落ちてしまったりしたら、何だかとても寂しくて、石に対してとても申し訳ない気持ちなってしまうのです。
中也が浜辺拾ったボタンへの思いと、私の石への思い。
似ているような気がして・・・。
そんな思いとは別に「ボタンが落ちていても私は絶対拾わないしこんな気持ちにはならない!」なあんて学生の頃の私は思ったりもしていたなあ~。(笑)
何より中原中也が見ていた「月夜の浜辺」に惹かれて、空想しては浸っていたような気がします。
この頃に思い描いていた「月夜の浜辺」が今も記憶に残っています。
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そんなことを、
月の出ない新月の夜に思い出しました(笑)