こすもす ちるどれん 

日々感じた小さな幸せを綴っています。よろしければお付き合いくださいませ。

おかしな かばのおかし屋さん   ~青空 ななこ~

 

おかしな かばのおかし屋さん

 

小さな小さな村に大きな大きなとっても大きなかばのおかし屋さんがありました。

そのおかし屋さんは、かばのおばあさんが一人で店をきりもりしていました。と言ってもいつもお店はからっぽ。お客さんは一人もいません。だって小さな小さな村ですから、住んでいるのはかばのおおばあさん一人だけなんですもの。

 

かばのおばあさんは毎日毎日朝から晩まで「ああ忙しいわ、ああ忙しいわ。」と言いながらほうきを持ってお店の中を行ったり来たりしています。

 

ある日のことです。かばのおかし屋さんに、お隣の大きな町から小さな小さなありさんの親子がやってきました。

 

「こんにちは。」

「わたしたち、隣町からきたんです。ぼうやがチョコレートが大好きなんです。ここにはチョコレートがあるかしら?」

 

「ああ忙しいわ、ああ忙しいわ。」

あれれ?

かばのおばあさんはありさんの親子に気が付きません。

 

次にやってきたのはねずみの兄弟です。ねずみの兄弟もお隣の大きな町からやってきたようです。

「おばあちゃんこんにちは!」おにいさんのねずみが大きな声で言いました。

「ぼくだち隣町からきたんだけど、隣町のお店にはアイスクリームがないんです。ここにはアイスクリームがありますか?」

 

「ああ忙しいわ、ああ忙しいわ。今日はとっても忙しいわ。」

かばのあばあさんたらせかせかとお店の中を行ったり来たりするばかりでいっこうにねずみの兄弟には気が付きません。

 

次にやってきたのは、たぬきのご夫婦。たぬきのおくさんはやっぱり大きな声でかばのおばあさんに話しかけます。

「こんにちは。私たち隣町からやってきたのよ。私たちいちごののったケーキを探しているの。こちらにはあるかしら?」

 

「ああ忙しいわ、ああ忙しいわ。今日は本当に忙しいわ。」

かばのおばあさんはやっぱりお店を駆け回りたぬきのご夫婦にも気がつきません。

 

次にやってきたのは、イノシシの子ども達。

「おばあさん、こんにちは。ぼくたち隣町からきたんだよ。」

「おばあちゃんこんにちは~!ぼくはきれいな色のキャンディーが欲しいんだよ。」

「ねえねえおばあさん、いちごのラムネはどこ?」

「あたしふわっふわのわたあめ食べたいの。おばあちゃんのお店にありますか?」

 

イノシシのこどもたちはおばあさんの服や手をひっぱって次々に話しかけます。

 

なのにかばのおばあさんは・・・?あれれれれれ?

「ああ忙しいわ、ああ忙しいわ。今日は何だか大忙しだわ。」

イノシシの子ども達には目もくれないでお店の中をあっち行ったりこっち行ったり走り回っています。

 

そこへ なんと ぞうさんまでやってきました。

「おばあさん、わたしとってもおなかをすかせているの。ケーキにアイスクリームにチョコレート、それにホットケーキもあると嬉しいわ。おいしいおかしをたくさん売ってくださいませんか?」

ぞうさんはそれはそれは大きな、隣町にまで聞こえるほどの大きな声でおばあさんに言いました。

 

それでもかばのおばあさんは・・・。

 

「ああ忙しいわ、ああ忙しいわ。今日はとても大忙しだわね。」

ほうきを持ってお客さんでいっぱいのお店の中を行ったり来たりするばかり。

 

 

そのうちに、お客さんの中で子どもたちが、かばのおばあさんに代わってお店やさんごっごをはじめました。

最初はイノシシの子どもたち。

ありさんのぼうやはチョコレートが欲しいんですね。それではこれをどうぞ。はい20円です。」

「どうもありがとう」

続いてありさんのぼうやとねずみの兄弟が、

「イノシシさんは何が欲しいんですか?」

「あたしはきれいな色のキャンディください」

「はいこちらから選んでください」

 

「私はいちごのケーキを頂くわ」

「はいこれは300円です」

 

「私はアイスクリームをお願いね」

「はいこちらにありますよ」

「はいこれは100円です」

 

そうこうしているうちに、みんながお店の人になったりお客さんになったりして、欲しかったものを順番に買って隣町に帰っていきました。

 

お日様も沈んでお店はまたかばのおばあさんだけ。

かばのおばあさんは「ああー今日も忙しかったわ お休みなさい」

 

おしまい